東京高等裁判所 昭和27年(う)920号 判決
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(判旨)
本件公訴事実が所論指摘のとおりであつてA町農業調整委員会の副委員長甲が昭和二六年二月初旬その預つていたA町風水害罹災農家に対する配給米の余剰米分二俵を他に売却して橫領したと判示しながら、犯行の場所を明示していないことは所論のとおりである。しかし犯罪の場所は罪となるべき事実を特定し以て訴因を明示するため、できる限りその記載をすべきものとされているけれども、罪となる事実それ自体ではなく、その記載をかき漏したからといつて、それが訴因を不明ならしめるものでない限りは不適法な公訴提起と認めねばならないわけではないし、本件において犯罪の客体はA町農業調整委員会副委員長たる甲が自ら保管していたA町風水害罹災農家に配給すべき米であること前記のとおりである以上、その保管の場所は特別の事情のない限りA町内にあると推定されるし、従つて、甲がその米を第三者に現実に売却讓渡した場所が不明であるとしても、その米を他に売却するに当つて右の保管場所より持ち出す等の橫領行為の一部を組成する行為は即ちA町内におけるものであることがおのずから推定せられるわけであるから、犯罪の場所は明示されなくても、本件公訴事実の訴因が不特定であるとはいえないし、右公訴提起が不適法であるとすることもできない故に論旨はその理由がない。